ビジネスマンに人気の大前研一氏の最新刊の一つである「『知の衰退』からいかに脱出するか?」を手に取ってみました。かつて大前氏の著書は数多く読みましたが最近はかなりごぶさたしておりました。
この混迷の時代に生き残って行くにはどのようにしたらいいかのヒントが数多く隠されているように思いました。
大前氏のユニークな視点、考え方には多くの部分で勉強させていただくことが出来ます。しかし、本書の中で例として示されている数々の問題を解くにあたって、思考前提が相容れないため、大前氏が解として示している解決策の多くに私は納得できなかったのが残念です。大前氏は自分の思考を論理的に書いているつもりなのだと思いますが、大前氏の思考の枠組みから見た場合のみの論理性であるのだと、自戒を込めて思いました。
しかし、本当に日本人の知の衰退ぶりは嘆かわしいほどです。嘆いていても仕方がないので、自分の周りから少しずつ発信したり、活動したりしていきたいと思っておりますが、簡単にはいかないでしょう。
現在、自民党が壊滅寸前の状況にあり、ほとんどの日本国民が「自民党はダメだ。やっぱり一度民主党に政権を渡さないと。」と思っているようです。自民党員に近い方であっても、いままで自民党にずっと投票してきた方であっても、そのように思っているようです。国民が考えることをやめてしまい、気分やムードで政治的スタンスを決めてしまっています。日本のマスコミによる度を超した偏向報道の本質を見抜く力もなくなっているのだと思います。(放送法というのがあり、政治的公正でるべきなのですが。)その様に考えると、国民1人1人の考える力がなくなっていくことは、本当に国力の衰退につながるのだと改めて感じました。
また本書で示されている「21世紀の教養」というのも、他では見たことのない新しい見方です。私は単なる流行ものだと軽く考えていました。。。今後は、もっともっと、「21世紀の教養」についてもアンテナを張っていきたいと思います。
以下、抜粋させていただきます。
・世界はいま、間違いなく混迷期に突入している。
・人間がもともと持っていて、いついかなるときも使える武器を駆使することだけは怠らないで欲しいということだ。その武器とはー「頭脳」である。
・パスカルは、こうも言っている。「考えることは疑うことから出発する」しかし、近年の日本人で、日常的に「疑う」ことをしている人はどれほどいるだろうか?
・そう考えると日本人の知の衰退ぶりは、もはや完全な危険水域に突入しているのではないだろうかと思えてくる。
・知の衰退は、「視野狭窄」から起こる。自分たちの周囲のことしか見ず、その結果、ブレイン・フリーズ(思考停止)に陥っているとしか思えない。
・たしかに人々は考えなくなっている。しかし、「考えない」人間は意見を持たないのかというと、じつは「意見」を持っている。「考えない」が「意見」は持ってしまう。
・2005年の総選挙で小泉自民党に投票して、2007年の参院選で民主党に投票した人は、ようするに何も考えていない。「B層」という、いわば「何も考えない」「IQが低い」「操作しやすい」人々。
・年金問題の責任は旧社会党などの左派勢力、朝日新聞などの大メディアのせいだ。かつて「国民総背番号制」に反対した。このことが、現在の年金記録漏れ問題に大きく影響しているのだ。
・現在の日本人に必要なのは、偏差値ではかれるような学力ではない。何より大事なのは「自分で考える力」「考えたことを実行する勇気」そして「結果が出るまで続ける執念」である。
・「考える」ということと、その力を養成するということは、じつは意外に簡単である。ともかく、現場から発想すること。これにつきる。
・低IQ社会を変えていくためには「目覚めた個人」を1人でも増やすしかない。けっして他人任せにしない。国に任せない。自治体に任せない。そして会社に任せない。
・21世紀のリーダーに必要な資質・能力 1.方向を示す 2.程度と方法を示す 3.具体的にやってみせる 4.できる人間を連れてくる
・集団IQの低下で、自分たちが学んでいないということさえ認識していない。本来、人間は一生学び続けるものだ。国も企業も個人も学び続けなければ明日はない。
・教養というものの重要な機能の一つは「知的基盤の共有」である。
・「地球市民として具体的にどのように考え、どのようなアクションを起こしているか?」という意識、これを「21世紀の教養」と呼ぶしかない。
・企業の社会的責任(CSR)や社会貢献、環境政策、社会的なノーブレスオブリージュの具体例などを話すことを求められている。
・哲学やギリシア神話の知識に変わって、いま話題の中心にあるのは「ネット社会の最先端の動き」である。
・ビジネスで要求されるのは世界のカレント情報である。
・頭でっかちの教養人よりも与えられた命題を解いていく能力、そしてその能力を知識ではなく行動に移せるかどうか。
・いまの日本人は、新しいもの、トレンドをどんどん取り入れ、吸収する能力が著しく落ちていると思うのである。
・現在求められている「21世紀の教養」は、サイバー社会も含めた最新の情報に基づいた考える力であり、それによって地球市民としてどのように社会に関わっていくかという意識である。そして、そこから導き出されるアイデアこそ、今後の力の源泉である。またそれが世界の中でリーダーシップを発揮できる源泉である。
・この本を読んで、具体的なアクションプランを挙げられる人が1人でも多くいることを、私は願っている。
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